タエ子「ねーねー、どっか連れてって」
 母 「映画に連れてってあげるわよ。『つるのおんがえし』やってるんでしょ?」
タエ子「そういうんじゃなくて、どっか田舎」
 母 「田舎?」

東京で生まれ育った私は「思ひ出ぽろぽろ」の岡島たえ子のように遠い田舎に憧れていた。


広い海で浮かぶ、大草原で寝転がる。
一面雪景色の中にいたい。
そうしたい何かが私の中にあった。
そんな時に人の体液の成分は海水と良く似ていることを知った。
私の中にある自然が、海や山や森と共鳴していたんじゃないだろうか。
雨が山に染み込み、海が蒸発して雲になるように、
私も汗をかいて、息を吐いて、一滴の水としてぐるぐると廻っている。
そんなことを思った。


2013




   

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